ぼくらのバドミントンレベル6【ザキの奇妙な冒険編】

2022年1月、30代男性が参加してくれました。

彼はとても丁寧な文章でメッセージをくれました。文章からでも人の良さが伝わってきます。

ただ、一見すると人が良さそうに見える文章なのですが、注意深く読み直してみるとどこか闇っぽく、もっといえばこちらを威嚇しようとする攻撃性のあるものが見えてきました。その部分を抽出し補足し文章を再構成していくと、次のような文章が浮き上がってきました↓

「今年、都会から岡山の倉敷というクソ田舎に転職してきました。そういうわけで同年代の知り合いも友達もいないから、仕方なくこのクソみたいなサークルに応募しようと思ったわけよ。とりあえず暇つぶし程度にな。でも、オレがわざわざ来てやるんだから、喜べよな?そういや、このサークルに若い女っているのか?港区女子の量産型感と底知れぬ下品さにも飽きてきたところだから、田舎の素朴な女を日替わりでまわしていくのもいいかなって思ってるんだよな。まぁそういうわけで、短い付き合いになると思うけどよろしくな。オレのことは好きに呼んでいいよ。ゲス男って呼びたいんならそれでいいよ。あ、そうそう、モテない男の僻み根性丸出しのサークルの紹介文は暇つぶし程度にはなったよ。田舎の陰キャにしか書けない文章だと思うから、ま、君みたいなやつらはせいぜいそういうところでシコシコ頑張ってくれよな。」

とんでもねぇやつだ。とんでもねぇやつが倉敷に乗り込んできよった。

YSP系だ。「いままでどれくらいの女性をYSPしてきたの?」と聞こうもんなら、「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」とマジで言ってきそうだ。

こういうやつは性根を叩き直してやらんといかん。都会生活でエスカレーターとかエレベーターとかウーバーとかを使いすぎて足腰が弱った30代だろうから、ワイたちがバドミントンでボコボコにして性根を叩き直してやろうではないか。田舎陰キャの底力を見せてやる。「ふるえるぞハート!燃えつきるほどヒ―――ト!!」

そしてインテリ都会インスタナイトプールゲス男と対面する日がやってきました。あの丁寧な文章から察するに、見た目も小綺麗な格好をしてくるのだと想像します。

想像通りでした。都会の人間が倉敷の水島という地域に馴染むための作戦としては100%の服装でした。

小汚くもなく、ダボダボもしてなく、清潔感あふれる格好です。

原色でもなく、派手さもなく、シックな色合いです。

かと言って、ダサくはありません。30オーバーな人がシック系を選ぶとおじさんくさくなる可能性がぐーんと高まるのですが、彼はそんなことは一切ありませんでした。

絶妙だ。まさに絶妙なバランスを考えてきている。倉敷の同年代の上位20%くらいには入れそうなおしゃれさを、あえてチョイスしてきたような小綺麗な服装です。都会さを強調せずに、わざわざこちらの田舎の世界に馴染ませようとする同調力の高さかうかがえます。

おそろしい。これが20代を都会で過ごした男というやつか…。TPOを瞬時に使い分けられる大人の余裕を感じる。カリスマ性を感じる。なんなんだ、なんなんだこの魅力は。

しかし、攻撃性も見え隠れしています。

完璧なTPOからは、「田舎もんにはこんな格好できるわけないよなぁ?お前らがやったら、一気にダサいおじさんのかっこうになっちまうもんなぁ?」と言ってるかのようです。

…言い返せねぇ。

だめだ、いつもの悪い癖が出てやがる。ぼくたち田舎男は、「都会からきた」というワードだけで凄まじい劣等感を感じてしまうのです。「SUICAを使ってる」とか「あの店のパンケーキ」とか「ナイトプール」とか「タピオカ店」を耳にしようもんなら、すぐに劣等感を感じちゃうんです。(岡山駅にタピオカ店ができた時は、喜びで震えたよね?)

呼吸を整えるんだ。まずはそこからだ。

スーハースーハー。コオオオォォォォ。

そう、彼らはたまたま都会とか都会付近に生まれただけだ。彼らがすごいんじゃない。彼らのお父さんとお母さんがすごいんだ。自分の子が都会で暮らせるように一生懸命働いて高い家賃払ったり、周りの子に馬鹿にされないように塾とかに通わせられる環境を整えた親世代のおかげ、なんなら祖父母世代のおかげなんだ。言ってしまえば遺伝だ。遺伝がいいだけだ。つまりは運だ。ガチャだ。親ガチャだ。

整いました。これでインテリ都会インスタナイトプールゲス男とも、対等に会話ができる。

とりあえずいつものお約束の「バド経験者ですか?」みたいなことを聞いてみようではないか。

「バド経験者ですか?」

「中学まで野球部で、高校と大学でバドミントンをやってました」

おいおい、ドンジャラをワイワイ楽しもうとしている小学生のところに、親戚の麻雀好きの大学生のお兄さんが乗り込んでくるくらいに場違い感があるんですけど。大丈夫なのか?レベルが違いすぎる気がするぜ。

まぁこちらもアラサー。あちらもアラサー。いくら技術があろうとも、体力は衰えているはず。最初の20分間くらいは超絶うまいかもしれないけど、あとはグダグダになるだろう。

…と思っていた自分が間違いでした。強い。強すぎる。いままで出会ったなかで一番強い。それも桁違いに。

体力云々の問題じゃない。すべての能力が何段階も高すぎて、彼のなにがどれだけすごいのかも計測することができない。

圧倒的に負けるのか…。

20代という若い時期を都会で過ごした男に…。欲望があふれる都会の街で遊び尽くしてきた男に…。インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男になにもできずに負けるのか…。

やるしかない。とっておきをやるしかない。インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男に一泡吹かせるためにはもうやるしかない。

ずっとおじさんのターン!

説明しよう。『ずっとおじさんのターン』とは、複数のおじさんが代わりばんこで1人のおじさんとシングルスで戦い続けるという必殺技である。今回の場合で言えば、4人の田舎おじさんが、1人の都会のおじさんと戦い続けるという構図である。

つまり、ぼくたち田舎のおじさんは休憩しながら戦うのに対し、都会のおじさんは休憩なしで戦わなければなりません。圧倒的にぼくらが有利なのです。

相手からしてみれば、倒しても倒しても休憩して体力を回復した元気なおじさんが出てくるわけです。これで肉体的にも精神的にも追い詰めることが可能なのです。

卑怯と言われようともいい。インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男を倒し、倉敷の治安を守れるならば悪党にでもなろう。

ずっとおじさんのターン!

この絵、たぶん小学生の女の子が見たら一生のトラウマになると思います。中学生の女の子はひくと思います。高校生や大学生の女の子が見たら「うわ、きもい」とか思いながら、ちょっとだけ笑えるためTik○okかIns○agramに#ずっとおじさんのターン でアップしてくれると思います。

周りからどう思われたっていい。おじさんと言えども男だ。男にはやらなければならない時がある。

勝利

この甘美たる2文字の響きを得るためには、恥を捨てる覚悟が必要なのである。なにかを得るために、なにかを捨てなければならないのはこの世の真理。二兎を追うもの一兎を得ず。捨てる覚悟のないものに、掴めるものはなにもないのだ。いくぞみんな!

#ずっとおじさんのターン!

(ちなみに小学生男子や中学・高校・大学の男になにを思われてもいいの?みたいな疑問があるかもしれませんが、やつらはおじさん予備軍なのでどうだっていいです。)

そこから田舎おじさんの猛攻が始まりました。負けることは当たり前。でも時間内に誰か1人でも勝てばぼくたちの勝利です(ということにする)。インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男め、田舎おじさんの猛攻をなめるなよ。

「オジオジオジオジオジオジオジオジオジオジーッ!!」

削れ。相手の体力を削るんだ。こちらもおじさんだが、向こうもおじさんだ。削り切るんだ。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!!」

インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男もそう簡単には負けません。根比べです。だが長引けば長引くほど、数に勝る我らが有利。いまは不利でも長期戦になれば勝利が見えてきます。耐えろ。耐えるんだ、田舎のおじさんたち。

30分後、勝敗が決しました。(お片付けする時間だったので)

結論から言うと、ぼくたちの完敗です。ぼくらは汗と体臭と口臭を撒き散らすことしかできませんでした(サークル目標である、水島体育館を汚染することには貢献できました)。対してインテリ都会吉原ヌルヌルゲス男はまだ涼しい顔でパーカーを着ていますし、なんなら息さえ切らしていません。

玉数が足りなかった…4人じゃ無理や…。おじさん4人では息を切らせることもできなかった…。もっと玉数が必要だった…。(注:玉数とは人数の比喩です。くれぐれも男性の人数×2とかはしないように)

インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男は最小限の動きしかしていませんでした。対してこちらは前後左右に振られ続けました。しかも、毎回予想とは逆の方向に打たれ続けるので、足首、膝、太ももに多大な負荷をかけられまくりました。たたでさえ減り続けている膝の軟骨が終わりを迎えそうです。

動きってここまで読まれるものなのか…。自分が動いた方向とは逆の方向にシャトルが飛んでくる、というより、気がついたらシャトルが地面に落ちようとしている…。上級者と初級者ではここまでレベルが違うものなのか…。

そんなこと可能なのか…。いや、まさか、そんなはずはないよな?でも、もしかしたら、もしかしたらあるのかもしれない。

一つの仮説を立ててみた。

もしかしてインテリ都会吉原ヌルヌルゲス男は、時を止めているのでは?

仮説が正しければ、この強さも納得できる。

予想とは違う方向にシャトルを打ち込める理由は、こちらの動きを察知しているのではなく、時を止めているからなのでは?ぼくらが初動を見せた瞬間に時を止めているからこそ、逆方向にシャトルを打ち込むことが可能なのでは?

つまり、インテリ都会吉原ヌルヌルゲス男は、時を止める能力を持っているスタンド使い…。

まさかこれがあの最強のスタンド『おじさん・ザ・ワールド』の能力、『おじさんの時を止める』というやつなのか。だからおじさんが束になっても勝てないというわけか。

ということは、このかたは最強のスタンド使い『ODI様』ということ?知的さ、カリスマ性、そして攻撃性、これらを兼ね備えているのもODI様なら納得だ。(この話が分からない方は、ジョ○ョの第三部を読んでね)

ひれふそう。ぼくたちがODI様に勝とうなんておこがましいにもほどがある。それにスタンドはスタンドでしか倒せないので、スタンド使いではないぼくらが勝てるわけないんだ。

最後に、ODI様の眼を見ておこう。ぼくらを嘲笑うかのようにボコボコにしたODI様は、崩れ込んでいるぼくたちを見てどんな眼をしているのか…。少しでも哀れみの眼を見せてくれているのだろうか…。

ODI様にバレないように、そっとODI様の方に顔を向けてみた。

当然のことかもしれませんが、ODI様はぼくたちを見ていませんでした。ODI様にとって、ぼくたちは蟻と同じ。人間が蟻を気にも止めないように、ODI様は崩れ込んでいるぼくたちのことを気にも止めていませんでした。

では、ODI様はなにを見ていたのか。

ODI様の視線の先を辿ると…



若い女の子がいたーーーーーーッッッ!!!!

こいつやっぱりゲス男だ。最強のスタンド使いODI様だけど、やっぱりゲス男だよ!(でもそんな本能に忠実なところ、シビれる!あこがれるゥ!)

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